治療体験
1.私が受けた初めての鍼灸治療(20年以上前、私自身の体験)
[ 症 例 ]
男子、22歳。主訴は両手指の皮膚炎。常にひび割れし、痒みを伴う。夜半及び疲労時に増悪。3歳頃から12歳までアトピー性皮膚炎として皮膚科に通院しており、手指の症状は全身の皮膚症状が治まった直後に発症した。
10月あたりから2月ごろまでは比較的に症状は安定するが、3月から6月初旬はたまに増悪し、6月末から9月中旬までが最も症状がひどい。
睡眠は就寝中に覚めることは少ないが寝起きが悪い。常に寝不足気味。大便は1日2回ほど、小便は数時間毎に行く。食欲は常に有る。
[ 治 療 ]
8月初旬に、井上系経絡治療を行う鍼灸院にて受診する。
15分ほどの治療で、静かな驚きの連続だった。先ずは手の触れ方が軽く心地良いこと。次に鍼が浅く、手足に至っては全く刺入しないこと。15分ほどの治療時間も新鮮であった。
手指そのものは鍼でサッサッとなでたくらいでほとんど施術は無かったと記憶する。何かされているけれども、何をされているか解らない。何だか解らないうちに治療は終わったが、直後から背中が温かくなり、気持ち良く鍼灸院より帰った。
手指に変化が起こり始めたのはその晩あたりからである。手が温かくなり、皮膚の色が明るくなってきた。今までステロイドを塗ってもこのような劇的な変化は無く、手はむしろ冷たくなっていたから、この効果に非常に驚き、また喜んだ。しかし、効果はこれに留まらず、翌朝にはひび割れも完全に治まっていた。
[ その後 ]その後について述べると、それから数年は若干の症状が有ったものの、現在は全く治癒しています。この治療体験は経絡治療の初めての体験で、この治療法を学ぶきっかけとなりました。
2.治療者としての体験(開業以後)
(1)その場の変化
[ 特 徴 ]
その場の効果として、以下の現象が多く見られます。
①症状がその場で緩解する。 ②顔色が明るくなり、顔がしまった感じになる。輪郭がはっきりする ③声が通る。 ④動作が軽くなる。 ⑤皮膚がうっすら赤くなる。

経絡治療の治療は脈診から手足の経絡上の要穴に施術する「本治法」と、それ以外の「標治法」に大別されます。しかし、「本治9割」という言葉が有るように本治が治療の中心となります。適切な本治法の場合、それだけで多くの症状が緩解することも多いのです。
[ 症 例 ]
女性、31歳。美容師で1日13〜14時間ほど仕事をしている。夕方より足がむくみ、帰宅時には足のむくみと重さを感じる。膝下よりむくみ、押してもしばらく凹んだままである。痩せており皮膚は浅黒い。疲労が過ぎると肩凝りが増悪し、日を置かず頭痛が起こる。この時点で治療をしない場合、のど風邪を引くことが多い。
6月から9月中旬あたりに調子が悪く、この時期はのど風邪や睡眠障害になることが多い。生理はほぼ28日周期で痛みと量は少ない。大便は朝1回ですっきりと出ている。小便は仕事中は少ないくらいで、それ以外は回数、量ともに出ている気がする。食欲は有るが小食である。
定期的な治療をしているが、今回は、一週間前に風邪を引き、やや治まったが、ここ数日は足のむくみがきついとのこと。触診すると膝下及び、足底が特にむくんでいる。本治法の後、足のむくみが劇的に緩解し、押しても凹まなくなった。肩、腰も施術をしたが、最初の本治で肩の凝りも楽になったとのことであった。顔色の変化も著しく、浅黒い顔が明るい顔色に変化した。
(2)長期的な変化
主訴と大小便食事睡眠(生理)に変化が起こります。また、不得意な季節、もしくは時間帯(日内変動)の症状が軽減していきます。また、特に女性の方でよく見られるのですが、服装やセンスが良くなるという変化が有ります。

[ 症 例 ]
女性、80歳。右股関節の動作時痛で治療をしている。9月から11月初旬まで調子が悪い。睡眠と通じの不調を訴える。睡眠は1回小水に起き、疲れているときは眠れないことが有る。大便は2日に1回であるのが気になっている。
初診から10年が経過している。長い期間、1ヶ月に1回程度思い出したように治療を受けていたが、この1年は週1回の治療をしている。
週1回の治療を始めてから、主訴の緩解とともに、睡眠と大便にも変化が現われ始めた。
3ヶ月ほどでやや変化が見られ、半年あたりから、睡眠では起きることがほとんど無くなり、大便は毎朝の快便となって今に至っている。体調の落ち込む9月〜11月は定期的な治療を始めてから半年目に当たるが、1年前の主訴、睡眠、大便ともに良くなっているという自覚が有る。
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