鍼灸師とは、「はり師」「きゆう師」の2つに分かれた医療資格です。現行医療の範疇に入らない東洋医学(経絡・経穴など)の専門職種と規定されており、その範囲での独立性を保持しています注1)。3年または4年の養成機関で学習し、国家試験を受ける必要が有ります注2)。鍼灸師の独立性を明文化した「鍼灸師法」の成立を望む声も有りますが、進行具合は良くないようです。

また、医業類似行為だという考えが有りますが誤解であり、厚労省からの文書により医療行為とされています。医業類似行為とは、カイロプラクティック、整体等の無資格者による医業に類似した行為を指します。法的には刑事罰の対象となる無資格診療に当たります。
近年の規制緩和に伴う鍼灸養成校の乱立により、鍼灸師の定員急増と過当競争が問題となりました注3)。卒業後の状況は厳しく、ほとんどの人が自身の生活がやっとという現実が有ります。鍼灸一本でやっていける鍼灸院は少なく、マッサージを主体にする治療院や、柔道整復師の免許を取り、鍼灸整骨院として生計をたてる方法が増えています。

研究分野では、WHO(世界保健機関)を初め、各国で鍼灸の研究が多数なされています。しかし、歴史的に見ても中心となるべき日本の鍼灸研究は、体制が非常に貧弱であり、研究者も少ないという現状があります注4)

鍼灸は痛みの症状ばかりではなく、内科的疾患の治療や管理に大きな可能性を実感しています。マッサージや電気と併用するばかりでは、その効果に限界が有るように思います。純粋な鍼灸治療が少ないという現状です。しかし、鍼灸一本で治療をしている者として、この治療を真剣に研究し伝えようとすれば、様々な可能性が開けるように感じています。
注1)対して、マッサージ師、柔道整復師は、他のパラメディカル資格と同様に医師の監督下に属します。
注2)3年制の専門学校、一部は短期大学、もしくは、4年制大学が有ります。凡そ3年間で、400万〜500万円の学費が必要であり、大学では1000万円近くの学費が必要になります。どの施設でも東洋医学と西洋医学の併修が必須ですが、西洋医学の基礎を中心に教育することが多く、東洋医学教育の充実化は進んでいるとは言えない現状です。最近では、一部の学校で中国や韓国へ研修旅行といった形で鍼灸を学ばせるところも有ります。
注3)<あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律第19条>により鍼灸師、または柔道整復師の養成施設の新規開設を制限していましたが、2000年以後、厚労省は条件さえ満たせば設置を認める方針に転換しました。そのため他分野の専門学校や異業態からの参入が相次ぐこととなりました。
注4)明治鍼灸大学が国際医療大学と改称するなど、「鍼灸」を冠した大学が消滅したことも日本における鍼灸研究の衰退を示すものという意見が有ります。
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